提供した労働役務等の対価に課される給与所得税,香港内で生じた営 業に係る所得に課される事業所得税及び香港内にある土地や建物等の不動 産から生ずる賃貸収入所得に課される資産所得税から構成され,香港外に 源泉のある所得は非課税であり,(b)法人の事業所得税は,法人が香港で 所得の源泉となる営業活動を行っている場合に課税の対象となり,基本税 率は17.5%であるなど,中国本土とは異なる独自の租税制度を有し, かつ,その租税の負担は世界的にも最も低い水準にあるものと認められる。
また,香港が中国へ返還された後の1998年(平成10年)2月には, 中国税務当局と香港特別行政区との間で,中国本土と香港との二重課税の 回避を目的とする「中国・香港二重課税防止取扱規定」(乙48)が調印 されたが,同規定7条1項(f)においては,それぞれの「権限ある当局」 は,中国においては,国家税務総局であり,香港においては,香港特別行 政区政府税務局局長(又は権限を与えられたその代理者)である旨規定さ れており,課税権を行使する当局もそれぞれ異なることが明示されている。
以上からすると,香港は,タックス・ヘイブン税制の適用上,中国本土 とは税制が異なり租税の負担が著しく低く定められた「地域」に該当する というべきであるから,本店所在地が香港であるP1が所在地国基準を満 たすためには,その事業を主として本店の所在する「地域」たる香港にお いて行っていると認められることを要するものと解される。
そうすると,本件では,P1は,前記アのとおり,その主たる事業であ る製造業を主として香港以外の「地域」で行っているため,措置法66条 の6第3項2号,同法施行令39条の17第5項3号に掲げる要件を満た していないことになるから,所在地国基準を満たさないといわざるを得な い。
地方団体の徴収金
地方税法73条の27第1項は,「道府県は,土地の取得に対して課する不動産取得税に係る地方団体の徴収金を徴収した場合において,当該不動産取得税について第73条の24第1項第1号又は第2項第1号の規定の適用があることとなつたときは」と規定しており,文理的に解釈すれば,同条による還付ができるのは,地方税法73条の24の前記各規定の適用があることが前提となっていると解され,仮に,地方税法73条の27第1項が,単に還付額の計算根拠規定にすぎないのであれば,地方税法73条の27第1項の規定は,「第73条の24第1項第1号又は第2項第1号の要件を満たしたときは」などの文言となっているはずである旨主張する。
しかし,「適用したときは」あるいは「適用があったときは」と異なり「適用があることとなつたとき」という文言から,文理的に同規定を適用して減額決定をしたことが前提であるとはとうていいえないのであり,そのような解釈を基礎づける立法技術上の用語についての慣習があることも認められない。
また,被控訴人は,租税確定行為を経た租税債権の税額を減少させるためには,当該租税債権について,課税庁による新たな賦課決定を経る必要があるものと解すべきであり,地方団体が本件減額規定によって納税者に対して徴収金を還付する場合,当該地方団体が徴収金を保有する正当な理由を失わせるためには本件減額規定に定める要件により減額決定を経ざるを得ないとも主張する。
しかし,本件還付規定自体が,所定の要件がある場合に,既に適法に納付された税を納税者に還付する根拠規定であり,本件還付規定の定める要件があり,還付の申請に理由があると地方団体が判断することが,当該地方団体が徴収金を保有する正当な理由を失わせることになるものとして法・条例に定められているものと解するのが相当で,本件還付規定の定める要件があることの判断とは別に減額決定をしなければ,当該地方団体が徴収金を保有する正当な理由を失わせることができないものではない。
その他,地方税法や千葉県条例に,本件還付規定による還付に当たって減額決定すべきことあるいは税額を減額の上還付すべき旨の規定はないこと,また,本件本則還付規定は,「これらの規定によつて減額すべき額に相当する税額・・・を還付するものとする。」と規定し,「これらの規定によつて減額された税額・・・を還付するものとする。」と規定されていないことからも,被控訴人の主張は採用できない。
(2)アこれに対し,原告は,製造業が製造行為及び卸売とから構成され ることにかんがみると,P1は,本店所在地たる香港において卸売すなわ ち製造業を行っているから,所在地国基準を満たす,P1の所在地た る香港とP10工場の所在地たる東莞市とは近接した場所に所在し,かつ, 被告の主張を前提にすれば経営諸帳簿は同一であるから,日本標準産業分 類に規定した事業所の取扱い単位の基準によれば,香港の本店とP10工 場とは一事業所と考えるべきであって,所在地国基準を満たす,被告 の主張を前提とすれば,P1がP10工場の生産管理等を行っているので あるから,販売行為のほかにこのような生産管理等を行っているというP 1の本店の負担している機能及びリスクの重さにかんがみれば,本店所在 地国たる香港で主として製造業を行っているというべきであって,所在地 国基準を満たす旨主張する。
イそこで,まず,上記の主張について検討するに,措置法66条の6 第3項2号,同法施行令39条の17第5項3号は,所在地国基準の要件 として,特定外国子会社等がその主たる事業を主として本店又は主たる事 務所の所在する国又は地域において行っていることを掲げており,前記1 及び(1)アのとおり,P1がその主たる事業である製造業を主として香港 以外の地域で行っている以上,その従たる事業である卸売業を香港におい て行っていることをもって,その主たる事業を主として香港において行っ ているとはいえないことは明らかであるから,上記主張は採用できない。
ウ次に,上記の主張について検討するに,措置法通達66の6−14 は,特定外国子会社等の営む事業が措置法66条の6第3項1号又は措置 法施行令39条の17第5項1号若しくは同項2号に掲げる事業のいずれ に該当するかどうかの基準として,原則的に日本標準産業分類を用いる旨 を定めているにすぎず,これは,前記1(4)エのとおり,当該特定外国子 会社等の事業活動全般の「主たる事業」を判定する際に,事業の種別の分 類を原則として日本標準産業分類の産業分類に依拠するものとした趣旨で あることは明らかであって,事業所の単位の認定基準として同分類を用い る旨を定めたものでないことは明らかであるから,同分類に掲記された事 業所の取扱い単位の基準を引用した上でされた上記主張は,措置法通達の 解釈としてその前提を欠いており,採用できない。
エそして,上記の主張について検討するに,前記1(2)ウ(エ)のとお り,人員面でも総費用面でも,P10工場における製造行為がP1の事業 の中核であることに加えて,原告の主張する生産管理等の機能面(リスク 負担を含む)を考慮しても。
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